2016年8月25日木曜日

ギリシャの島村より 3

兄だ弟だ言ってきたけれど、アポとトドは、実の兄弟ではない。

トドがアポの村づくりに"弟子入りした"というのがしっくりくるだろうか。
アポは村づくりに賛同し共につくる仲間を"家族"と呼ぶ。
村にはもっとアポの"家族"がいるそうだけれど、どうやらトドは特別なアポについているようで、こうしてよく2人で旅をするそうだ。

先述したとおりアポはナチュラリストであり、
農作物を有機農法で耕し、森の恵みを拝借して家を建て、水路をつくる。
そういう生活をしている。

アポは私にずいぶん前もってリクエストメッセージを送り、そこで立派なwebサイトを紹介してくれた。
アポの活動がかなりの規模で、健全で純粋であることがよく分かり、
そうしてとても興味深かったので、
男2人の受け入れはかなり大変だと分かりつつ、
私はこうして兄弟を迎えた。

ついでにアポもトドもベジタリアンである。
この食についてはまたおいおいきちんと書きたい。

ギリシャの島村より 2

   (後日彼らが送ってくれた謎の写真)

弟のトドは、バックパッカーのすごいいでたちだったけれど、ファンタジー映画から出てきたような美しいマリンブルーの目をしていた。

横断歩道を陽気に踊り渡ると、
私を抱きしめ、兄にアポに何か言った。
ギリシャ語というのはとても渋い音をしている。

トドは、また私をしげしげ見て、今度は綺麗な英語で、よろしくねー!とはしゃいだ。

このトドのほうは、どうやら感動を隠すタイプではない。
いちいちにビックリして、目を輝かせ、大騒ぎする。
23,24歳の、一生のうちでも輝いた時期にいる。

対して兄のアポは、悠々とし、貫禄たっぷり。
疲れたでしょう、はやく家に行こうといっているのに、
腰ほどまである長い髪を束ねているアポは、それをぐるんとまわして、あたりをゆっくり見回して満足そうに息をはいた。

いずれにしても2人はこのローカルな駅で異様なオーラを放っており、ママチャリに乗せられた今度が呆然と振り返って過ぎていった。



2016年8月24日水曜日

ギリシャの島村より 1

時計の針は数ヶ月前に戻す。

冬の終わりにギリシャから来たアポ&トド兄弟は、招いたゲストの中でも強烈なブラザーズだった。


アポ&トドは、所謂"ナチュラリスト"。
自然と共存して、殆ど自給自足で生きている。

数年前にギリシャの島に、"Free and Real" というドーム、というか、村を作った。
安らぎと自然を求めて世界中から仲間が集まる。

そういうわけでアポ&トドはお財布にも精神的にも貧乏ではない。
そして同時に出来上がったホテルを渡る旅も好きではない。

私の家は狭いので、お客一人、が基本なのだけど、アポのプロフィールは他のゲストより抜きん出て魅力的で、迎えることに決めた。

いつもの駅に迎えにいくと、
ローカルとは明らかに違う深いオーラを放った、長髪の外国人がいて、それがすぐアポだとわかった。

アポも私がホストだとすぐに察して、
お互い別々の言語ではしゃぎながら抱擁した。

アポはギリシャの独特な喉づかいで、
"トドー!" と叫んだ。

トドは信号を渡った先で、腕組みをしながら、そして真剣に、吉野家でドンブリをがっつく日本人を見ていた。

プロローグ


待ち合わせは小さな地元の駅と決まっている。
バックパッカーの大きな荷物を肩にかけて、疲れと好奇心の交じった目であたりを見回している人が私のお客だ。

"ろびんさん!"

"ろびんさん"はかろうじて無料wifiが届くセブンイレブンの前でしゃがんでスマホで写真を編集していたけれど、私に気がつくと目を大きく見開いてパンっと立って叫んだ。

"アリガトウゴザイマス!"

今こうして、"ろびんさん"を迎えているように、私は外国人旅行者にホームステイしてもらう活動をライフワークにしている。

海外は好きだけれど、日本って休みを取るのが本当に大変だ。そんなに長期間はどうしても行けない。
それなら日本の中で、触れ合えたらいいな、と始めた。

ありがたいことに毎日世界中からたくさんのリクエストをもらって、もう何人迎えたか、とにかく、東京下町のなんでもない駅にたくさんの外国人が来てくれた。

こんなローカルな家にまで辿り着く彼らは皆、旅の達観者で、旅行者というより冒険家と言ったほうが正しい。

私の見る東京はいつも新しい。
彼らと同じ目線に立つといつも違って見える。
窓から見える該当、商店街を行くおばあちゃん、車の音…

彼らと見る、"普通かつwow! "
の記憶を、丁寧に記録したい。