初めて1人だけで歩いた国は、
オーストリア。
真冬のウィーンでした。
もう何年も前のことですが、今でもあの時の旅は、私のフライト人生の中で筆頭に入るものです。
クリムトを見たいなあ、と小さい頃から憧れていた国で、ベルギーにしばらく住んでいたとき、せっかく近いのでフライトを取りました。
海外の鉄道のオンボロさには、あの時期に慣れたんだと思います。
ヨーロッパの鉄道は国々の美しさとは裏腹に、頑丈ですが恐ろしく旧式で、あまり掃除もされていません。
飛行場からそんな鉄道で市内に着いた夜、
ウィーンは信じられないほどの猛吹雪で、目の前1メートル先が見えるのがようやくでした。
ここまで降ると、美しいなんて言ってられません。
夜、前方不明、初めて来た、の三拍子で、おまけにホテルはそんなに有名なところではなくて、地図も最近のgoogleマップほど詳しくなく、
本当に途方にくれました。
数メートル歩いたけれど、これは遭難して死ぬかも、と思う程、雪の勢いはどんどん強くなりました。
それで、ともかく目の前にあったカフェに逃げ込みました。
雪まみれでストールをマチ子巻きにした変ないでたちのアジア人女子、ということで、
店員さんも数人いたお客もジロジロ私を見ていました。
それでも、"はー寒かった!ビールちょうだい"と、平然とオーダーしていた私は、我ながら男前だなあ、と思います。
もうすっかり、きっぱり忘れてしまったのですが、
ベルギーにいたとき、多分私は少しオランダ語を話してたと思います。
ドイツ語もなんとなく似ていて、ちょっと話していたように思います。
不思議なもんで、生きないといけない、という状況では、人ってすごいスピードで言葉を覚えますし、なんとか話します。
とにかくまあ、今日はひどい雪だね〜〜なんて、店員さんと簡単に話していたら、最初はうさんくさそうに私を見ていた、その素晴らしく美しい金髪美女スタッフは、
ずいぶんフレンドリーになってくれました。
それで去り際に、ホテルの方角を聞いたら、
なんと彼女は薄いシャツ一枚のカフェ姿で、マイナス10度はあろうかという路地に一緒に出てきて、
かなり丁寧に位置を教えてくれました。
私は強烈に地図に弱い女です。
それでよくまあ今まで色んな国でやってきたもんだと思いますが、
兎に角、もし彼女に聞かなければ、
そのときも全く真逆の方向に歩くつもりでいました。
それで当然ホテルは見つからず、本当に、ウィーンの道端でバッタリ倒れて、
翌朝冷たい姿で発見されていたと思います。
冒頭の写真は、無事にホテルについて、生きていた自分に乾杯したときのビールです。
しょうもない写真ですが
そんな事件があったもので、
よく覚えてます。
そして彼女のおかげで、ウィーン旅行の始まりから、すっかりウィーンの印象が良かったように思います。
翌朝から雪はすっかり止んで、穏やかな毎日でした。
というか私が駅についた数時間だけのゲリラ豪雪だったようで、言うほど積もっていなかったのです。
あのカフェからホテルは、実はとても単純な道順だったことが分かり、
いやあ、こわかったなあ、と、独り言いいながら平和に過ごすのでした。
色々な国に行きますが、
思いおこせば、そういえば、毎回なにかしらトラブルは起こしています、私。
パリ足カク事件といい、成都の銀行でクレジットカード飲まれる事件といい、ハワイ食中毒事件といい…さらに振り返ればミラノで物乞いしたこともあります。それはまた別の機会に。。
小さいハプニングは個人手配の旅につきものです。
しかし必ず誰かに助けられ、
一見楽しみが台無しになってしまうような出来事も、結局素晴らしい思い出になっていったように思います。
人に感謝です。